Canon EOS R6 のポリカーボネートボディについて
こんにちは。satoです。
今回は、Canon EOS R6 のポリカーボネートボディについての話をしようと思います。
カメラボディの材質
カメラのボディはだいたいの場合「マグネシウム合金」という金属で作られています。
マグネシウム合金は、軽くて丈夫な金属ということで、軽さと丈夫さを両立させたいプロダクトにはピッタリの金属ということになります。
EOS R5 や EOS R も、ボディはマグネシウム合金製。
でも、EOS R6 は、内部構造にマグネシウム合金を採用しているものの、外装には「ポリカーボネート」という樹脂(プラスチック)を採用しています。
CanonさんのWebサイトによれば、EOS R6 に採用されているのは「特殊導電性繊維入りポリカーボネイト樹脂」とのこと。
これは、EOS RP にも採用されている材質です。
ポリカーボネートボディのカメラはこれまでもあった
Canonさんはこれまでも何度か、カメラの外装にポリカーボネート樹脂を採用しています。
例えば、EOS 6D Mark II では「アルミニウム合金ガラス繊維入りポリカーボネイト樹脂」、EOS 90D や EOS 80D では「ガラス繊維入りポリカーボネイト樹脂」を採用している実績があります。
単なる「ポリカーボネート」ではなく、「特殊導電性繊維入り」とか「アルミニウム合金ガラス繊維入り」「ガラス繊維入り」といった、いろいろな種類のポリカーボネートがあるんですね。
調べてみると、いろいろなメーカーからいろいろな商品名のポリカーボネートが販売されています。
さて、この「ポリカーボネート」という材質、どんなものなんでしょうか?
ポリカーボネートという材質
ポリカーボネート(英: polycarbonate)は、熱可塑性プラスチックの一種。化合物名字訳基準に則った呼称はポリカルボナート。様々な製品の材料として利用されている。モノマー単位同士の接合部は、すべてカーボネート基 (-O-(C=O)-O-) で構成されるため、この名が付けられた。ポリカ、PCと省略されることもある。また、アクリル樹脂などと共に有機ガラスとも呼ばれる。ドイツのバイエル社が開発した。
「熱可塑性プラスチック」?
可塑性とは、固体に力を加えて変形させたとき、その力を除いても元に戻らない性質のことをいいます。 ー中略ー 加熱により可塑性が出るものを熱可塑性といいます。 つまり、熱可塑性樹脂はガラス転移点、または融点まで加熱すると柔らかくなる樹脂です。 そして再び冷やすと固くなります。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは? |湯本電機株式会社
なるほど。成型しやすくて便利ということですね。
ポリカーボネートの特徴
ポリカーボネートには以下のような特徴があるようです。
利点
- 透明度が高い
- 衝撃に強い
- 熱に強い
- 燃えにくい
難点
- アルカリ性薬剤、溶剤で劣化する
- 表面は傷つきやすい
ふむふむ、透明で丈夫で燃えにくくて、でも薬剤には弱くて、丈夫なわりには傷つきやすいのがポリカーボネート、と。。。
でも傷つきやすいくらい柔軟じゃないと、ちょっとした衝撃でパリン!といっちゃう気がしますね。
耐衝撃性は折紙付きみたいで、例えば戦闘機のキャノピー(窓ガラス)や防弾ガラス、軍用ゴーグルなどに採用されているんだそう。
飲料を入れる透明なボトル(ペットボトルではない)なんかにも使われています。
どれも、頑丈さはもちろん、透明度が重要なプロダクトですね。
カメラのボディに用いるとなると逆に透明度は必要ないわけですが、そういう場合は着色して使うことになります。
でも“薬剤に弱い”という弱点があるので、成型してからの塗装は難しそうですね。
成型前の段階で、染料を混ぜて着色するみたいです。
カメラボディの材質としてのポリカーボネート
ポリカーボネートは軽くて頑丈だということがわかりました。
とすると軽さと頑丈さが求められるカメラのボディにはピッタリの材質ですよね。
それでも、今発売されているカメラのボディにはマグネシウム合金が使われているものが多い。
なぜでしょう?
いろいろと専門的な観点からの理由もあるんでしょうが、素人考えで想像できるのは“強度”と“薬剤への耐性”、そして“質感”といったあたりでしょうか。
強度
金属とプラスチックでは金属のほうが強いであろうことは容易に想像がつきますね。
物質の強度を表すとき、「ヤング率(単位はGPa)」というものを使うらしいんですが、これは Wikipedia によれば、
フックの法則が成立する弾性範囲における、同軸方向のひずみと応力の比例定数である。
とのこと。うん。わかりません。
まぁ、このヤング率の数値が大きいほど頑丈ということらしいんですが、ポリカーボネートのヤング率が2.3GPaなのに対して、マグネシウムのヤング率は45GPa。
確かにすごそう。
でも、ポリカーボネートだって戦闘機や防弾ガラスにも使われるくらい頑丈なんだから、カメラのボディに使うぶんには十分すぎる強度ではないでしょうか。
ただ、ポリカーボネートは表面が傷つきやすいという特性も持っているようなので、ガシガシ持ち運んで使うカメラのボディに使うには、ちょっと心許ない部分もあるのかもしれません。
自然写真や戦場写真といったジャンルの用途では、確かにマグネシウム合金のほうが安心なのかも?
薬剤への耐性
先述したとおり、ポリカーボネートは薬剤に弱いという特性を持っています。
アルカリ性の洗剤などが付着した状態で放置してしまうと、ひび割れや変形を起こす可能性があるとのこと。
界面活性剤にも弱いそうです。界面活性剤といえば、洗濯用洗剤に含まれている場合が多いですね。
洗濯用洗剤がカメラに付着するという状況はあまりない気がしますが、身近な存在だけにまったくないとは言い切れません。
調べてみると、アルカリ性洗剤は油汚れに強いらしく、食器用洗剤にもアルカリ性のものが結構あるみたいです。
食器用洗剤には界面活性剤を含んだものも多くあります。要注意ですね。
逆にマグネシウムは、水、アルコール、酸に弱いという特性を持っています。
酸化してしまうんですね。金属らしい特性と言えますね。
これを防ぐためには、表面に塗装を施します。
僕も今までマグネシウムボディのカメラを使ってきて、雨に濡れたり水遊びの水がかかったりと結構水に濡れる場面が多かったですが、特になんともありません。
塗装によってコーディングされているおかげなんですね。
質感
これはカメラの道具としての“機能”というよりはユーザーの気持ちの部分かと思います。
人間が使う道具である以上、「使えればいい」というわけにはいきません。
「持っていると嬉しい」「使うのが楽しい」と思わせてくれることも道具の重要な要素です。
そういった意味で、この“質感”というのも大切な要素の1つになってきます。
金属とプラスチックでは、明らかに質感が違います。
本来は単純に「AとBの違い」という横並びの違いでしかないと思うんですが、プラスチックの質感に対して金属の質感のほうが「より高級」と感じる人は多いかもしれません。
かく言う僕も、これまでずっとマグネシウムボディのカメラを使ってきたから、EOS R6 を初めて手にしたときは「あ、こういう感じね」という印象はありました。
ただ、1日使っているうちに完全に馴れました。
僕の中ではもう完全に「カメラってこういうもの」になっています。
使っていくうちに摩擦や衝撃で表面の質感がどう変わっていくかわからないですが、少なくとも今の段階では不満はまったくありません。
もしかしたら、“慣れ”というより、カメラとしての性能が良すぎてボディの質感なんてものが些末な事柄に思えてしまっているのかもしれません。
それくらい、EOS R6 は写真を撮るのがとっても楽しいカメラです。
でもやっぱり中には「プラスチックか。。。」と思ってしまう人もいるだろうとは思います。
そのへんは人それぞれなので、そういう人はマグネシウムボディのカメラを選んだほうが幸せになれますね。
実際手に取ってみて
外観は上々
EOS R6 のボディ表面は、極細かいザラザラの加工がしてあって、プラスチック独特のツヤ感を和らげています。
安いプラスチック製品にあるような成型ムラ(?)のようなものもなく、上質な仕上げになっています。
ただ、先述したとおり、初めて手に取った瞬間から最初のうちだけは、外観の面で若干の“違和感”のようなものがありました。
ただ、1日使っただけでその違和感はなくなったし、ふとマグネシウムボディの他のカメラを手に取ってみても、違和感は感じません。
それは、「違いがない」ということじゃなくて、「違いが気にならない」という意味です。
その「違い」を言い換えるなら、「クオリティ(品質)の違い」ではなくて、「テイスト(嗜好)の違い」という感じでしょうか。
外観については、EOS R6、とってもいい感じだと思います。
軽さは抜群
最初に箱を開けて取り出したとき、まず感じたのが「軽っ!」でした。
かなりガッシリとしたボディで重そうに見えますが、手に持ったときの軽さはちょっと衝撃的でした。
もちろんバッテリーもSDカードも入ってない状態だったわけですが、それにしても軽いと感じましたね。
見た目が重そうなので余計に軽く感じるのかもしれません。
バッテリーとSDカードを入れ、RF 35mm MACRO IS STM を装着して持ってみると、ほどよいズッシリ感。
マイクロフォーサーズの OM-D E-M1 に M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO を装着した状態と比べてもそんなに変わらない印象です。
計ってみると、総重量では OM-D E-M1 が927グラム、EOS R6 が997グラム。
ちょうど70グラム EOS R6 のほうが重いんですが、体感的にはまったくそんな感じがしません。
EOS R6 に比べると OM-D E-M1 のほうがボディが華奢でグリップ感が弱く、さらにレンズが重くて重心がレンズ側に行ってしまう分、重く感じるのかもしれませんね。
ともあれ軽さについても、EOS R6、とってもいい感じだと思います。
(重いレンズを付けたらまた少し違うかもしれないですが。。。)
(マウントアダプター早めにお願いしますCanonさん。。。)
強度は?
これはどうでしょう。
わざわざ落としたり叩いたりするわけにもいかないので確かめる術がないですが。。。
天下のCanonさんがそんなヤワなプロダクトを出してくるわけないので、きっととっても頑丈なんだと思います。
なんといっても戦闘機のキャノピーや防弾ガラスに使われているのと同じ素材で作られたカメラですから。
まとめ
カメラのポリカーボネート製ボディについては好みもあるし賛否あると思いますが、EOS R6 については、僕はこれで正解だったと思います。
例えば、EOS R6 のボディをマグネシウム合金にする代わりに「50グラム重くなって値段も5万円高くなる」とか「値段はそのままだけどAFの性能が落ちる」とかは嫌ですよね。
EOS R6 は、性能、価格、その他諸々すべてをバランスよく検討してデザインされた、素晴らしいプロダクトだと思います。
というわけで今回は、Canon EOS R6 のポリカーボネートボディについて書いてみました。
いかがだったでしょうか?
読んでくださったあなたの参考に少しでもなれば嬉しいです。
それではまた次回。
【追記】1年半使ってみて
EOS R6 を手に入れてからというもの、写真を撮ることがそれまでよりもさらに楽しくなり、趣味に仕事にと使いまくっています。
そうして早いものでもう1年半が経過しました。
EOS R6 を1年半使い続けてきて、ポリカーボネートボディの採用について改めて感じていることを書いてみようと思います。
まったく違和感なし。というか気にもしない。
結局のところ、ボディの材質がどうこうなんていうことは使い始めてすぐに気にしなくなって、もうそんなことについては考えもしないっていうのが正直なところです。
それは、この EOS R6 というカメラが、機能・デザイン・質感といったさまざまな面で高品質に完成されていて、満足度の高いプロダクトだからだと思います。
ただ、これは「カメラというものをどう捉えているか」によって感じ方が違ってくると思うので、人それぞれなんでしょうが、少なくとも僕は一切気になりません。
質感の変化、劣化など
これは一切ありません。
厳密には何かしらの変化があるのかもしれないですが、普通に肉眼で見たり手で触っている限りでは特に気になる変化はありません。
摩擦したり、傷がついたり、変色したりという変化は、少なくとも僕の使っている EOS R6 には起こっていません。
1年半使い続けた EOS R6 の前面。特に損傷や変化は見られません。よく見ると所々汚れがありますね。。。あとでクリーニングします。
こちらは背面。きれいなものです。
シャッターボタンやメイン電子ダイヤル付近。
あ、溝に汚れが着いていますね。あとでクリーニングしておきます。
ポリカーボネートボディとは関係ないですが、ボタンの印刷が摩耗したりもしていませんね。
こうして記事を書いていると、改めて「EOS R6 を使い始めてもう1年半になるのか」と驚きます。
趣味に仕事にいろいろなシチュエーションで大活躍してくれていて、本当に買ってよかったと思わせてくれるカメラです。
これからも大切に使っていこうと思います。
ポリカーボネート樹脂(PC) – 機械設計エンジニアの基礎知識